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【実践企業紹介】札幌市交通局さま

全職員約700名からなる「札幌市交通局」。この組織の実務のトップとも言える重責を担い、 ドラッカーマネジメントを取り入れ成果をあげる田畑さんにお話を伺ってきました。

田畑祐司さん

 田畑祐司さん

札幌市交通局高速電車部長(※2014年取材当時)

1955年札幌市生まれ。立命館大学法 学部卒業後、民間の自動車販売会社を経て札幌市役所へ。交通局財務課からスタートし、ほぼ交通局に勤務。 2009年より現職、直属の部下400人を率いるトップマネジメント。

 

「お仕事をおしえてください。」

札幌市交通局で高速電車部長をしています。
市内の地下鉄3路線と、中央区を走る路面電車1路線の運営・管理を担っています。
地下鉄の方は全長48km、全49駅を運営し、1日あたり約57万人の方々に利用いただいています。
私はその中で、業務課・指令所・運輸課 など全部で7つの課を所管し、事業管理、技術担当の2人の部長と力を合わせて安全運行と事業経営をしています。

札幌市地下鉄路線図

札幌市地下鉄路線図

 

「“ドラッカー”との出会いは?」

今から数年前、異動先の部署でドラッカーに魅せられた係長さんがいました。
その人が職場内でドラッカー本の読書会を開くことになり、そこに何の気なしに参加したのがきっかけです。

その読書会では『経営者の条件』が読まれ、私は例にもれず衝撃を受けたのです。
特に、「成果をあげるのは才能ではない」という部分と、「汝の時間を知れ」という全くできていなかった「時間管理」の章に目からウロコが落ちました。

その後、ドラッカーの世界にどんどん引き込まれていきました。
仕事柄『非営利組織の経営』に続き、初期の著作で ある『経済人の終わり』などエターナル版は全て購入、読みあさりました。

ちょうどその頃、ドラッカー学会の存在を知り旭川で大会があるということで即座に入会し参加。
そこで知ったナ レッジプラザに入会して一層ドラッカーの世界が広がっていったのです。
毎月の「ビジネス塾」への参加はもちろん、「実践するドラッカーセミナー」にも参加。読書会にも積極的に 参加し、「読書会ファシリテーター」 にも認定されるようになりました。

 

社内読書会を通じて“共通言語”をつくる

「仕事にはどのように活かしていますか?」

ナレッジプラザの会員さんたちは、とても魅力的な人が多いんです。
人生や仕事、学ぶことを楽しまれている。そういった学び仲間から元気をもらっていました。

その学びの蓄えを職場にも還元したいと考え、職場の中で読書会をはじめたのです。
すぐに賛同者が現れ、口づてに参加者は増えました。通常の読書会の倍のペース、つまり4ヶ月で1冊を読む早さでやっていたのですが、10人程度の会が最初は2つ。そして3つ、4つと班が増え、私一人では回らなくなったので、“職場内 (なんちやって)ファシリテーター”にお手伝いしてもらっています (笑)。

 

「成果はどうですか?」

私達の目標の一つに、輸送人員を地下鉄60万人、路面電車2.5万人にしたい、ということがあるのですが、その前提として「安全があってはじめて」という基本があります。その上で、駅員が親切だとか、笑顔のあいさつがあるといった付随する価値があります。これらすべてをひっくるめて、ドラッカーのいう「顧客の創造」つまり利用者にとっての価値を生み出すことを事業のコンセプトに据えています。

こういった職場の土壌形成にあたり、読書会を通じて「共通言語」ができ、ベクトルが一致したことが非常によかったことですね。
強みを活かす、貢献を重視するなど職場の価値観が共有されることで仕事がやりやすくなりました。

 

「組織で「共通言語」ができると、組織の価値観が共有できるというわけですね」

そうです。例えば、会議などの意思決定の最後には、

「これはドラッカーの原理原則に反してないか?」

という議論でチェックが始まるんです(笑)。

そういう思考回路や職場風土が醸成されてきました。

 

 

コミュニケーションは、必ずしも情報を必要としない。実際いかなる論理の裏づけもなしに経験を共有することこそ、完全なコミュニケーションをもたらす。

『マネジメント[エッセンシャル版]』(p.161)

 

②一人ひとりの強みと貢献を公益につなげる

「新しい取組みもどんどんされていますね」

路面電車は2015年に環状化して 新しく生まれ変わります。これを機会ととらえて多くのお客様にご利用いただきたいと思っています。十勝バスさんの取組み (注 『実践するドラッカー[事業編]』 p.98参照)を参考に、「小さく始める」「ノンカスタマーに聞く」を実践して、住民インタビューや出前講座など様々な取り組みをしているところです。

「主だった方々で十勝バスさんに見学に行かれたそうですね?」

ええ、コミュニケーションを成立させるには、体験や経験を共有し、それぞれの異なる“ものの見方”を相互確認することです。5年前からは、慶應義塾大学の先生と一緒に「ヒューマン・エラー・マネジメント (HEM)」という安全管理活動に取り組んでいます。これは「人はミスを犯すことが当たり前」ということを前提に、「利用者の安心感や満足を高める」ことと、「働きがいのある職場づくり」という両面から見直すことで、事故やトラブルが起こりにくい組織づくりを目指す活動。事故の未然防止につながっています。このHEMは、ドラッカーマネジメントと親和性が高く根本は同じ。我々の基本原則になっています。

 

「今後はどのようなことを?」

人口190万人の市民の足を担う公共交通は重要なインフラ。暮らしを下から支えるものだと思っています。安全はあたりまえ。水や空気のように使っていただけるような存在になりたい。それには、利用者の満足はもちろんですが、職員の満足もなければ実現しません。

 

 

「二つを同時に実現するということですね」

ええ、そのために、ドラッカーの言う「貢献に焦点を合わせる」という考え方を皆に浸透させたい。また、ドラッカーの教えるコミュニケーションのあり方も組織に取り入れたい。これらを実践して安全をベースとしたお客様満足と、それらを実現する人材育成を願っています。そういった意味でも、HEMとドラッカーマネジメントの両方を取り入れて隅々にまで浸透させ、我々が取組んでいるこの「札幌方式」を全国のスタンダードにすることが私の密かな “野望”でもあります。

 

目標なるものは、鉄道の時刻表ではない。それは航海のための羅針盤である。それは目的地にいたる航路を示す。

「現代の経営(上)」(p.80)

 

Q:自分たちの組織がいずれたどり着きたい先を明確に示していますか?

Q:それは、自分たちだけでなく、お客様や世の中をも幸せにする内容ですか?

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